【開発秘話】クリニック向け自動精算機『Clinic KIOSK』が生まれた理由
クリニック向け自動精算機「Clinic KIOSK」は2015年に生産開始してから、たくさんの医院様にご導入いただいており、2024年3月末時点のシリーズ累計導入数は2,000台(※OEM 提供を含む)を超えました。
今回は当社がクリニック向け自動精算機『Clinic KIOSK』を開発することになったきっかけや、自動精算機に対する想いをご紹介します。
クリニック向けの自動精算機の開発に至るきっかけ
当社は、元々パソコンの出張修理や工程管理プログラムの開発などシステム開発を事業としていました。そんな中、17年ほど前に整形外科病院をご紹介いただいたことがクリニック向け自動精算機開発の始まりです。
はじめは電子カルテのカスタマイズやベッド管理システムの開発導入だったのですが、2011年ころに自動精算機の調達を依頼されました。当時、医療業界で売られていた自動精算機は大病院用に作られたもので、製品が大きいうえにコストもかなりのものでした。
それを安く作れないか?と打診されたのですが、当社に自動精算機を作成するノウハウはありませんでしたし、時間もありませんでした。そのため、ホテル用の自動精算機を制作していたある会社と、製品を売るための販売店と提携し、3社で開発を行いました。
クリニック・診療所向けの自動精算機に特化していった理由
医療業界に大きな市場を見出して戦略的に開発していったというよりも、整形外科さんにとにかくクリニックに適した自動精算機を作ってほしいと言われたので、最初はお客様の要望に応えただけ、という感じでした。
ただ、大きな病院には自動精算機はそのころすでに導入されていましたが、クリニックや診療所にはまったく精算機が設置されていませんでした。そのため、これは機械の大きさと価格をうまくマッチさせれば、需要があるのではないかと思いました。
しかし、クリニック向けの自動精算機にはひとつ大きな壁がありました。というのも、病院やクリニック・診療所など医療機関は患者データをレセプトコンピューター(医事会計システム、以下レセコン)と連携させなければなりません。さらに、このレセコンのメーカーは小さいものまで含めると数十社もあるのです。
従来からあった大病院用の大手メーカーの自動精算機は、自社のレセコンと繋がっている。しかし、クリニックに置けるような省スペースの自動精算機には既存のレセコンはなく、自動精算機とレセコンを連携するソフトウェアを開発しなければなりませんでした。
その点、当社にはそれまでの経験から、そのようなソフトウェア開発のノウハウがあったわけです。
自動精算機とレセコン、2つを繋ぐソフトウェアを開発しさえすれば、そのレセコンを使用しているクリニックすべてが顧客となる可能性があると考えました。
ソフトウェア開発の経緯
各社のレセコンと自動精算機を繋げるには、数十社あるレセコンの会社から、システムに関する情報開示をしていただく必要があり、ソフトウェアの開発には難航しました。
自動精算機の購入を検討されているクリニックが使っているレセコンメーカーを一社一社、「情報を開示してくださいませんか?」とお願いして回った時期もあります。守秘義務がある話ですから、もちろん断られることもありました。
ただ、当社の精算機に繋げることはレセコンの会社にしても販路拡大のチャンスになります。また、クリニック側から「精算機に繋げられるレセコンへ変更します。」と言われるリスクがあるわけですので、当社が自動精算機と繋ぐソフトウェアを開発することは先方にもメリットはあるわけです。
はじめは頑なだった事業者さんも徐々に軟化して情報開示を受け入れてくださり、今では約95%以上のレセコンの会社とシステムを連携できるようになっています。
新事業展開で苦労した点
第一に、資金繰りです。それまで当社は受託のソフトウェア開発事業がメインで、無借金経営をしていました。しかし、自動精算機を作るためにはユニットなどを先に仕入れないといけない。さらに、そのユニットが非常に高額なのです。それを10台単位で発注するわけですから資金繰りは大変でした。
第二に、機械の不具合です。やはり初めてのことだったので、最初は不具合が多くお客様からのクレームも多くありました。
あまりにもエラーが多かったために、「精算機を引き上げてくれ!」と言われたこともあります。
それでも当社はパソコントラブル対応を出張でやってきた歴史があるのでトラブルに強いのです。
トラブルはとにかく、すぐ修正する。この怒られたお客様に対しても、「一人毎日サポートをつけますから」と言って3カ月間毎日、その後1年間、週1回社員をつけて、開院前から閉院後の締め作業まで行いました。それで信用を得て、5年以上、今でも当社の製品を使ってもらっています。
当社の経営理念
当社の経営理念として「情報技術を駆使し、人が豊かに暮らせる効率のよい社会づくりに貢献します」を掲げています。
自動精算機の導入時は、使い方を説明するだけではなく、業務フローの見直しが必要になります。自動精算機の導入は「設置すること」ではなく「活用すること」が目的です。各施設の実情に合わせて対応するよう心がけていますし、稼働後のトラブル時の対応だけでなく、法定改正への対応や業務改善のご相談など、継続的な支援を行っています。
たとえば、過去に『Clinic KIOSK』の導入に向けた相談のなかで、自動精算機を使うよりも、窓口で会計を行ったほうが合理的なケースもありました。
その場合は、その診療所・クリニックの事情に寄り添った形でアドバイスさせていただきます。
機械というのは基本的に壊れるものと思っていますので、売りっぱなしにせず、それをどれだけ最小限に止めてサポートするかが重要と考えております。
導入いただいたクリニックに対する地道なサポートを繰り返すことにより、安定的に受注が入り、2024年4月時点でシリーズ累計導入数2,000台を突破しました。(※販売台数はOEM 提供を含む)
それでも、日本の医科クリニックは約10万施設、歯科クリニックは約6万8千施設ありますから、今後も多くの医院様にご導入いただくために、新しい技術やお客様の声を取り入れていきたいと考えております。
この記事の執筆者
株式会社APOSTRO 経営企画室
川越 雄太
大学卒業後、大手コンサルティング会社にて、医療機関のコンサルティングに従事。その後、医療介護人材紹介会社の経営企画部門を経て、当社へ入社。クリニックや薬局のコンサルティング、ITシステム導入支援のアドバイスを行なっている。