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最低賃金の大幅アップでクリニックはどう変わる?生き残るための経営戦略

クリニック経営

2025年度の最低賃金が平均1,121円へと大幅に引き上げられ、すべての都道府県で1,000円を超えるようになりました。今回の改定は、地方の小規模クリニックほど人件費負担や採用難の影響を受けやすく、「これまでの運営のままでは立ち行かない」と感じる方も少なくありません。
本記事では、最低賃金が大幅に上がった背景から、クリニックに起きる影響、そして今日から始められる具体的な対策までをわかりやすく解説します。

最低賃金が大幅に上がった背景

2025年度の最低賃金は全国平均で1,121円となり、前年度比で66円(約6%)の引き上げとなりました。
各都道府県では令和7年10月から順次適用され、最も遅い秋田県では令和8年3月31日に発効します。

すべての全都道府県で時給1,000円を超えるのは史上初です。これまで都市部(東京・神奈川・大阪)が1,000円台で、地方の多くは900円台後半が多く、地域間格差が問題視されていました。
なぜ大幅に引き上げられたのか、その背景を解説します。
参考:地域別最低賃金の全国一覧‐厚生労働省

1.物価高と生活防衛

近年、食品や光熱費(電気・ガス・水道)といった生活必需品の価格上昇が長期化しています。その結果、賃金の伸びが物価上昇に追い付かず、実質賃金の減少が続いていたことが課題でした。特に最低賃金に近い水準で働く人ほど、食費や光熱費の割合が高く、物価上昇の影響を強く受けます。こうした状況を踏まえ、2025年度は生活を守れる賃金水準が重視され、大幅引き上げが妥当と判断されました。
参考:2025年8月4日 令和7年第7回目安に関する小委員会 議事録‐厚生労働省

2.賃上げを成長戦略の柱に

政府の「骨太方針2025」では、賃上げが成長戦略の中心に位置づけられています。「物価上昇を上回る賃上げを実現し、2020年代に最低賃金1,500円を目指す」という目標が掲げられており、今回の改定もその流れのひとつです。賃上げによって家計に余裕を生み、消費を活発化させ、経済全体を循環させる狙いがあります。ここ数年、最低賃金は着実に上昇してきましたが、2025年度はその中でも最大幅の改定となりました。
参考:「経済財政運営と改革の基本方針2025」等について‐厚生労働省

3.人手不足・地域間競争の強まり

慢性的な人手不足が続く中、賃金が低い職場ほど応募が集まらず、離職も起こりやすい状況です。特に地方やサービス業では、「隣県より賃金が安いと人材が流出する」「賃金を上げなければ採用できない」といった地域間の競争が強まっています。その結果、39道府県が国の目安額を上回る引き上げを行い、全国的に最低賃金が底上げされました。東北や九州など、もともと賃金水準が低かった地域で伸び率が高く、前年から約8%上昇した県もあります。
参考:全国平均は66円増の1,121円で、すべての都道府県が1,000円超に‐労働政策研究・研修機構

最低賃金引き上げによるクリニックへの影響

今回の最低賃金の大幅引き上げは、クリニックの経営に大きな影響を与えます。
特に、人件費・採用・シフト運用の3点で影響が大きく、地方の小規模クリニックほど負担が増えやすくなっています。ここでは、クリニックで想定される主な影響3つを解説します。

1.人件費率の悪化により経営が困難に

クリニックの人件費率は、一般的に売上の20〜25%が目安ですが、最低賃金の上昇によりこの割合はさらに高まります。医療機関は料金(診療報酬)を自由に設定できないため、人件費の上昇を価格に転嫁することが困難です。そのため、賃上げ分がそのまま経営を圧迫し、院長給与の調整やスタッフ数の見直しなど、運営面での負担が増大します。特に受付・医療事務のように最低賃金に近い時給の業種が多いクリニックでは、固定費の急増につながりやすく、今後の運営を慎重に見直す必要があります。

2.地方では医療事務・受付が採用難・流出

医療事務は「給与水準が低い」「業務量のわりに給料が見合わない」という声が多く、離職や採用難が以前から課題でした。最低賃金が上がったことで、他業種(ドラッグストア・スーパー・飲食など)と時給の差が縮まり、地域によっては逆転するケースもあります。そのため、応募が全くこない、経験者が定着しないといった問題が起こりやすくなります。特に地方は人材が都市部へ流れやすく、今後も最低賃金が上がる見込みであることから、採用環境はさらに厳しくなると考えられます。

3.扶養内のパートが働ける時間の検討

最低賃金が上がると、同じシフトでも年間収入が増えるため、扶養内で働くパートスタッフから「シフトを減らしたい」という希望が出やすくなります。扶養制度は見直しが進んでいるものの、収入ラインを超えると税金や社会保険料の負担が急に増える構造は変わっていません。

  • 103万円→2025年改正で123~160万円に拡大
  • 106万円→被保険者51名以上の事業所で社会保険加入(一般クリニックは対象外が多い)

ただし、医療法人本部+複数クリニックを「一体事業所」として扱うケースや、大規模グループ病院併設のクリニックでは対象になる場合があります。

最低賃金引き上げでクリニックが対応できること

人件費と採用難が深刻化する中、運営を安定させるために取り組める対策を紹介します。

資格・スキルに応じた手当や評価制度の導入

スタッフの育成と離職防止のために、スキルが上がれば賃金が上がる仕組みが有効です。
評価するスキル例

  • 業務スキル:受付・会計・レセプト・電子カルテ・在庫管理など
  • 行動評価:患者対応・チームワーク・改善提案・ミスの少なさなど
  • 資格:医療事務資格・レセプト資格など(資格手当は月3,000~5,000円が一般的)

スキルを明確に定義し、等級制度と手当を紐づけ、評価を昇給・賞与に反映することで、スタッフ定着に大きな効果があります。

シフト・人員の見直し

扶養調整を希望するパートが増えることが予想されるため、時間帯別に必要人数を再設計する必要があります。

  • 扶養の壁を気にするスタッフには、短時間パートを活用
  • 繁忙時間帯には常勤や長時間パートを厚めに配置
  • 受付・会計・レセプト・診療補助の複数業務を兼務できる人材を育成

役割が固定化されすぎると欠員時にクリニックが回らなくなるため、少人数で回る柔軟な体制が必須です。

収益改善で原資をつくる

クリニックの場合、固定費を大幅に削ることは難しいため、収益を積み上げる仕組みを整えることが効果的です。

  • 予防接種、健診、栄養指導、看護師による相談など自由診療の拡充
  • オンライン問診、初診・再診の枠分けによる回転率向上
  • 導線や配置を見直し、少人数でも効率的に動ける体制づくり

上記の取り組みによって、人件費上昇による経営負担を抑えられ、結果としてさらに収益が増加する可能性も期待できます。

機械で自動化できる業務は導入を

受付・会計業務は自動化の効果が発揮しやすい領域です。特に受付・金銭授受・会計はトラブルも多く、スタッフの負担が大きい業務です。そこでおすすめしたいのが、受付〜会計までを一台で担う Clinic KIOSK。

  • 締め作業が減り、残業時間・人件費を抑えられる
  • キャッシュレス決済対応で現金処理の手間を軽減
  • 会計待ち時間が短縮し、患者さんの滞在時間を削減
  • スタッフの負担軽減で働きやすい職場に

省力化とサービス向上を同時に実現できるため、導入するクリニックが増えています。

これからのクリニック運営に向けて

2025年度の最低賃金引き上げは、特に地方のクリニックにとって人件費負担・採用難の影響をさらに厳しくする要因になります。そのためクリニックは、人に投資する部分と、機械に任せる部分を明確に分けることが必要です。資格やスキルに応じた評価制度、時間帯に応じた人員再配置、収益改善による原資づくりなど、できる対策は多くあります。
一方で、受付・会計などの人がやらなくてもよい業務は機械化し、少人数でも安定して運営できる仕組みを整えることで、安定した運営が可能です。 運営の見直しと自動化を組み合わせることで、スタッフが定着し、患者満足度が上がり、経営が安定するクリニックづくりを実現できます。

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