2026年度に本格施行へ!かかりつけ医機能の法制化で変わるクリニック

2024年度から「かかりつけ医機能」の法制化が始まり、2026年度の本格施行を前に、制度設計や診療報酬体系の見直しに向けた議論が進められています。これまでクリニックは「身近な受診先」という位置づけでしたが、今後は地域医療の中核として、患者さんの生活に長期的・包括的に関わる役割が求められるようになります。
本記事では、かかりつけ医機能の法制化の概要や報酬制度の動き、そしてクリニックに求められる対応について解説します。
かかりつけ医とは
かかりつけ医とは、健康に関するあらゆる相談に応じ、必要に応じて専門医や病院へ紹介する「身近で頼りになる医師」のことです。風邪や生活習慣病など日常的な診療はもちろん、予防接種や健康診断などの健康管理を担い、患者さん一人ひとりの生活背景をふまえた診療や保健指導を行います。
近年では、医療機関だけでなく、介護・福祉との連携や在宅医療の推進にも力を入れるクリニックが増えており、地域包括ケアシステムの中でも重要な存在です。
少子高齢化が進むなか、医療の現場では「患者さんを地域で見守る医療」へのシフトが進んでおり、日常的な健康管理から重症化予防、必要時の専門医連携までを一貫して支える「かかりつけ医」の重要性が一層高まっています。患者さんにとっても、日常の小さな不安や体調の変化を早期に相談できることで、安心して生活を続けられるというメリットがあります。
法制化の概要と狙い
かかりつけ医の重要性が高まるなか、政府は2024年度から「かかりつけ医機能」の法制化に着手しました。目的は、地域で継続的かつ総合的な医療を提供できる体制を強化し、限られた医療資源を有効に活用することです。これまでも「機能強化加算」などによって、かかりつけ医の役割は診療報酬上ある程度評価されてきました。しかし、あくまで任意の取り組みであり、地域や医療機関によっては十分に機能が発揮されないケースも少なくありませんでした。そこで法制化によって、一定の基準を満たした医療機関に明確な役割を課し、制度として地域医療の中核に位置づけることを目指しています。
制度設計と運用基準の議論状況(2025年現在)
現在、厚生労働省を中心に制度設計が進められており、以下の3つの柱で議論が行われています。
1.認定要件
かかりつけ医として認めるための条件として、診療実績や診療時間、医師・スタッフ体制、時間外対応、災害時対応、地域連携体制などが検討されています。さらに、電子カルテや地域医療ネットワークといったICTの活用も重視される方向で、外来対応だけではなく、地域医療全体のハブとして機能できる体制が求められます。
2.業務範囲
健康相談、予防医療、生活習慣病の管理、在宅療養支援など、従来よりも広い範囲の業務が明確に制度上求められる見通しです。慢性疾患を抱える高齢者の増加に対応するため、日常の診療に加え、地域包括ケアに積極的に取り組む姿勢が重要になります。
3.患者の登録制度
患者さんが自ら「かかりつけ医」を選び、登録する仕組みの導入も議論されています。この仕組みにより、患者さんと医療機関双方の責任関係が明確になり、より継続的な関係構築が可能になります。一方で、登録数の上限や受け入れ体制、説明義務など、実務上の調整も必要です。
診療報酬上の評価と加算の方向性
法制化に合わせ、診療報酬体系も見直されます。2026年度以降、かかりつけ医機能に対応した新たな加算体系が本格導入される見込みです。現在の主な加算と今後の方向性は以下のとおりです。
機能強化加算
基本的な外来診療に加え、かかりつけ医としての機能(健康管理・相談対応・専門医紹介・時間外対応など)を備えている場合に算定できる加算です。2025年現在、初診で80点などの報酬が設定されています。
算定には以下のような体制整備・報告が求められます
- 日常的な健康相談への対応
- 他医療機関との連携体制
- 時間外対応の仕組み
- 防災計画の策定・報告など
地域包括診療加算
高血圧、糖尿病、認知症など、複数の慢性疾患を有する患者さんや高齢者に対して、包括的な診療管理を行う場合に算定できます。「地域包括診療加算1・2」で構成され、対応項目数や体制によって点数が異なります。患者さんの同意を得たうえで、必要な診療・指導・健康管理を継続的に行うことが要件です。
今後の報酬制度の方向性
今後は、算定実績や患者さんの数、地域連携の取り組み内容などの報告が義務化される見通しです。加算を算定するだけでなく、実際に「かかりつけ医機能」を十分に発揮しているかどうかが、より厳密に評価されるようになります。
クリニックに求められる対応
2026年度の本格施行を見据えて、制度への対応と並行して多方面での準備が求められます。ここでは、今後クリニックに求められる主な対応の方向性を5つ解説します。
1.地域医療の受け皿から中核へ
かかりつけ医機能の法制化により、クリニックの役割は大きく変わります。従来のように「患者さんが必要時受診する場所」という受け身の立場ではなく、地域全体の健康を支える中核的な存在としての責任が求められます。少子高齢化や在宅医療の拡大など社会構造の変化を背景に、予防医療から重症化予防、専門医連携、在宅支援までを一貫して担うことが期待されています。
2.ICTと地域連携の強化
法制化に伴い、地域との情報連携を強化する必要があります。今後本格的に稼働する予定の電子カルテの共有、また地域医療連携ネットワーク、オンライン相談などを活用し、多職種・他機関とスムーズに情報を共有できる体制を整えることが必要です。ICT活用は、地域で患者さんを切れ目なく支える医療の基盤となります。
3.かかりつけ医認定に向けた準備
2026年度の本格施行に向けて、認定基準や加算要件を意識した早めの準備が重要です。「かかりつけ医」の認定は厚生労働省の「かかりつけ医機能報告制度」に基づいて行われる予定で、現時点では体制整備の準備段階にあります。報告受付は2026年1月から始まる見込みであり、今は自院の体制を確認し、必要な要件を満たせるよう整備を進める時期にあたります。
4.地域との信頼構築と発信
制度への対応だけでなく、地域との信頼関係を築くことも大切です。地域医療連携会議への参加や、地域住民向けの健康講座・勉強会の開催、ホームページや地域紙での情報発信などが効果的です。取り組みを行うことで、地域の人々や関係機関との信頼関係構築につながります。
5.医療DX推進による業務効率化とスタッフ不足への対応
医療DXの推進は、かかりつけ医機能を支えるうえでも重要です。電子カルテの活用やオンライン予約・問診、クラウド型情報共有、自動精算機などを導入することで、限られたスタッフでも業務を円滑に進めることができます。スタッフ不足を抱えやすいクリニックでは、DXが人材確保の代替策になるだけでなく、働きやすい環境を整えることで離職防止や採用強化にもつながります。
なかでも、クリニック向け多用途端末「Clinic KIOSK」は、現場のDXを後押しするツールです。
Clinic KIOSKは、再来受付や会計業務を1台でこなす多機能端末で、クリニックに必要な機能を絞り込むことで導入コストを抑え、現場で使いやすい仕様を実現しています。診察券をかざすだけで再来受付ができ、案内表示板とのシステム連携により診察や会計の待ち状況も確認可能(ご利用の電子カルテにより異なります)。さらに、キャッシュレス決済にも対応しており、柔軟な支払いに対応できます。
Clinic KIOSKを導入することで、窓口スタッフの業務負担が大幅に軽減され、人件費の高騰や人材不足への対応にも役立ちます。
実践的なDXツールをうまく取り入れることで、現場の業務効率化と経営の安定化の両立が期待できます。
制度の本格施行を見据えて今から準備を
2024年度から始まった「かかりつけ医機能」の法制化は、2026年度から本格的に運用が始まる予定です。クリニックは従来の身近な受診先から、地域医療の中核としてより幅広い役割と責任を担うことになります。診療報酬体系や認定基準の整備が進む一方で、現場では地域連携やICT活用、医療DXの推進といった対応も求められます。今から準備を進めることで、制度施行後もスムーズに対応でき、地域に根ざした医療を提供する「かかりつけ医」としての役割を果たせます。
2026年度を見据え、早期の体制整備と戦略的な取り組みを進めていきましょう。