マイナ保険証へ完全移行!?動向と医療DX加算の最新情報

2025年12月より健康保険証は廃止され、マイナ保険証または資格確認書の利用が必須となります。
制度移行のスケジュールは示されていますが、利用登録率と実際の利用率には大きな差があるのが現状です。さらに、診療報酬ではマイナ保険証の利用率が評価対象となるため、医療機関の経営にも関わります。
本記事では、マイナ保険証の制度の最新動向と、現場で求められる対応について解説します。
マイナ保険証の義務化と移行スケジュール
2024年12月2日をもって、従来の健康保険証の新規発行は停止されました。
今後、新しい健康保険証が発行されることはなく、基本的にマイナンバーカードを利用する仕組みに一本化されています。
すでに手元にある健康保険証も、最長で2025年12月1日までしか利用できません。
2025年12月2日以降は「マイナ保険証」または「資格確認書」のいずれかを提示する必要があります。
マイナ保険証を持たない人が利用する資格確認書
マイナ保険証を持たない人には、保険者(健保組合・国保など)から「資格確認書」が発行されます。
資格確認書を提示すれば、従来と同じ自己負担割合で受診が可能です。
マイナ保険証を持たない人とは、次の人が該当します。
- マイナンバーカードを持っていない
- 保険者にマイナンバーカードを提出していない
- 健康保険証の利用登録を行っていない
- マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れている
マイナ保険証・資格確認書も持っていない場合
マイナ保険証も資格確認書も持っていない場合、窓口では一時的に医療費を全額自己負担で支払う必要があります。
後日、保険適用の手続きをすれば差額は払い戻されますが、ご本人や医療機関にとっても手間や負担がかかります。
マイナ保険証の普及率と提示率
マイナンバーカードを健康保険証として利用するには、事前に「保険証利用登録」が必要です。
2025年8月時点で、登録を完了している人は約87%に達しており、多くの人がマイナ保険証を使える状態にあります。しかし、実際に医療機関でマイナ保険証を提示している人の割合は、同時点で34.32%にとどまっています。
利用率が伸び悩んでいる背景には、次のような要因が考えられます。
- 高齢者やデジタルに不慣れな人が、端末操作に不安を抱いている
- 窓口での案内不足により、従来の健康保険証をそのまま使い続けている
- 読み取り機器の設置や操作に時間がかかる場合があり、患者さんや医療機関が手間を避けがち
医療機関においては、マイナ保険証の利用率が診療報酬加算に影響するため、早期から患者さんに積極的な利用を促すことが重要です。
参考:マイナンバーカードの普及に関するダッシュボード‐デジタル庁
参考:オンライン資格確認について‐厚生労働省
スマホ対応のマイナ保険証
2025年9月19日より、スマホマイナ保険証の利用が開始されました。
これまでマイナンバーカードを持ち歩かないと保険証の機能は利用できませんでしたが、スマホに搭載されることで利便性が大きく向上します。
スマホマイナ保険証は、Android・iPhoneどちらでも利用可能。専用アプリやスマホのウォレット機能を使って提示できる仕組みです。
利用するための事前準備や対応端末については、「スマートフォンのマイナ保険証利用について」をご確認ください。
医療機関がスマホマイナ保険証の提示を受け付けるには、専用の読み取り機器を設置する必要があります。
専用機器の導入費用の一部は、国の補助制度により負担軽減されます。
具体的には、Amazonビジネスの販売専用ページから購入し、保険医療機関や薬局のみが利用できる電子クーポンを使って、補助額を差し引いた価格で購入可能です。
補助制度の詳細については、「オンライン資格確認・オンライン請求トップページ」をご確認ください。
医療DX推進体制加算の改正
マイナ保険証の普及を後押しするため、診療報酬上の評価である「医療DX推進体制整備加算」では、利用率に関する実績要件が段階的に引き上げられることになりました。
具体的には、令和7年10月と令和8年3月の2段階で基準が定められています。
利用率の算定は数か月前の実績値が反映されるため、基準を満たすには早めの取り組みが必要です。
利用率実績と適用時期、医療DX推進体制加算については以下の通りです。
| 利用率実績 | 令和7年1月~ | 令和7年7月~ | 令和7年12月~ |
| 適用時期 | 令和4年1月~ 令和7年9月30日 | 令和7年10月1日~ 令和8年2月28日 | 令和8年3月1日~ 令和8年5月31日 |
| 加算1・4 | 45% | 60% | 70% |
| 加算2・5 | 30% | 40% | 50% |
| 加算3・6 | 15%※1 | 25%※2 | 30%※3 |
※小児科外来診療科を算定している期間の特例措置
※1 前年(令和6年1月1日から12月31日まで)の延べ外来患者数のうち、6歳未満の患者が3割以上の医療機関では、令和7年4月1日~同年9月30日までの間に限り12%
※2 ※1の要件をみたす医療機関では、令和7年10月1日~令和8年2月28日までの間に限り22%
※3 ※1の要件をみたす医療機関では、令和8年3月1日~令和8年5月31日までの間に限り27%
マイナ保険証利用のために医療機関がとるべき対応
マイナ保険証の本格運用に向けて、医療機関は端末環境の整備・患者さんへの支援・スタッフ教育を進める必要があります。それぞれ詳しく解説します。
端末環境の整備
マイナ保険証の読み取りには、専用のオンライン資格確認端末が必要です。
すでに多くの施設で導入が進んでいますが、今後は新たに始まった「スマホマイナ保険証」に対応できるリーダーの設置も求められます。
読み取り機器を導入した後は、リーフレットやステッカーを院内に提示し、患者さんへの周知を徹底しましょう。
厚生労働省のホームページでは、掲示用のリーフレットやステッカーが配布されており、「オンライン資格確認に関する周知素材について」からダウンロードできます。
患者さんへの操作支援
普及率を高めるために、高齢者やデジタル機器に不慣れな患者さんへの支援が必要です。
受付窓口に「マイナ保険証の受付操作」のポスターを掲示することで、患者さん自身で操作がしやすくなります。
また、操作に迷っている患者さんがいれば、スタッフが積極的に声をかけ、案内できる体制を整えておくことが重要です。
スタッフへの教育
マイナ保険証の受付操作に不安を感じる患者さんや、制度自体を理解していない患者さんも少なくありません。そのため、スタッフ全員が機器の操作方法だけでなく、マイナ保険証や資格確認書の仕組みについても周知しておくことが必要です。
さらに、患者への説明用Q&Aを院内に整備して共有すれば、スタッフ全員が統一した説明を行えるようになり、現場の混乱防止につながります。
マイナ保険証の利用率を向上させよう
2025年12月から始まったマイナ保険証への完全移行は、日本の医療現場にとって重要な節目となります。利用登録率はすでに高い水準にある一方、実際の利用率にはまだ課題が残っており、普及促進と現場での定着が必要です。
医療機関は、患者さんの不安を解消しながら利用を促進する姿勢が求められます。
マイナ保険証の活用は、患者さんにとっての利便性向上だけでなく、医療の質の向上や業務効率化にもつながります。 制度移行の過渡期にある今こそ、医療機関全体で準備を進め、医療DXの基盤を支えることが期待されています。