医療事務の求人が難しい〜医療事務が集まるクリニックを作る方法〜
前回の記事「医療事務の求人が難しい〜採用市場の現状とその対策について〜」にて、採用難に陥っている状況とその要因について解説しました。
今回の記事では、医療事務に選ばれるクリニック作りの方法について解説します。
目次
1.医療事務にとって魅力的な職場とは?
2.働きやすい環境整備 その1:効率的な業務
・業務の棚卸
・役割の見直し
・テクノロジーを活用する
3.働きやすい環境整備 その2:教育体制、マニュアル
・教育体制を整備する方法
・業務マニュアルを作成する
4.働きやすい環境整備 その3:福利厚生
5.働きやすい環境整備 その4:円滑な人間関係
6.まとめ
1.医療事務にとって魅力的な職場とは?
まず、医療事務にとって魅力的な職場とは何か?を考える必要があります。人それぞれ魅力的に感じるポイントは異なるため、クリニックごとにチューニングが必要ですが、一般論として記載していきます。
働きやすさと働きがいについて
人は、仕事において、”働きやすさ”と”働きがい”を求めます。
・“働きやすさ”について
統計をとったことはないのですが、多くの医療事務スタッフさんの話を聞いた内容や、採用コンサルの話を聞く中で、医療事務職に就く方は、”働きがい”よりも”働きやすさ”を重視する傾向が強いと感じています。働きやすい環境を作る上での重要ポイントは下記になります。
・効率的な業務
・教育体制、マニュアル
・福利厚生
・良好かつ円滑な人間関係
“働きやすさ”を実現するための、上記ポイントについての具体的方法は後述します。
・“働きがい”について
人が仕事に対するモチベーションに影響する要素として4つ(※)のものがあるとされています。
・「Philosophy(理念)」
・「Profession(仕事の内容)」
・「People(人)」
・「Privilege(名誉・待遇)」
(※)参考:THE TEAM 5つの法則 – 麻野 耕司 (著)
この4つは、人によって比重が異なりますし、クリニックによっても、強みとなるポイントが異なります。そのため、自院がこの4つのどこに強みを持つか、もしくは今後持たせていくか?を整理することが有効です。
その際には、現在いるスタッフを当てはめてみて、皆さんがどこに比重を置いているかをヒアリングしてみるのが良いでしょう。
2.働きやすい環境整備 その1:効率的な業務
・業務の棚卸
現在行っている業務を洗い出します。それぞれ、その業務を行っている担当部署と、1日にかける時間を書き出すことで、その業務にどれだけの工数をかけているかが可視化できます。この作業が業務改善の肝になります(表1参照)。
表1:業務の棚卸例
・役割の見直し
作成した業務棚卸しリストをもとに、以下の点を検討しましょう。
・業務そのものを、なくせないか?
・業務のやり方を変えて効率化できないか?
・業務を維持する
なかなか時間の確保が難しく、検討をしたことがないクリニックが多いと思いますが、本気で向き合うと、意外と効率化を検討できる項目は多くあります。
・テクノロジーを活用する
テクノロジーの進化は、医療業界にも大きな影響を与えています。電子カルテはもちろん、予約システム、WEB問診システム、自動精算機など、多くの技術が医療現場での活用が進められています。
今後、さらにテクノロジーの進化が進む中、医療事務の採用はより一層難しくなると予測されます。そのため、今からテクノロジーの活用を本気で考え、対策を講じることが求められます。
3.働きやすい環境整備 その2:教育体制、マニュアル
多くのクリニックの人材採用の課題として、「採用しても教える暇がない」という声や、「スタッフの能力のバラつきにより特定のスタッフに業務が偏る」といった声をよく聞きます。
人を増やしたいのに、採用自体が難しいことや、人を増やしても、ベテランスタッフさんばかり忙しい状況が続いてしまっては描いていた姿とズレがあるかと思います。
それをできる限り標準化するための方法として、教育体制の整備やマニュアルの導入があります。
・教育体制を整備する方法
(1)教育のスケジュールを作成する
ステップに分けて教育に関わっています。また、それをスケジュールに分け、それぞれ教育対象となるスタッフさんの教育進捗を可視化しています(表2参照)。
表2:教育スケジュール
(2)教育チェックリストを作成
業務内容を洗い出したものに、教育対象のスタッフがその業務をできるようになったか、なっていないかを評価するためのチェックシートを作ります。
これにより、どのスタッフさんがどの業務ができるのか?次に何を教えれば良いかが明確になります(表3参照)。
表3:教育チェックリスト
こういったチェックリストを使うことで、特定の”できるスタッフ”への業務の偏りの予防にもつながりますので、ぜひトライしてください。
・業務マニュアルを作成する
効果的なマニュアルを用意しておくことは、教育にかかる手間の削減につながります。業務の合間に都度先輩スタッフに聞くと、その間の業務が止まることになりますし、聞くこと自体がお互いのストレスにつながります。
そこで業務マニュアルを用意し、新人スタッフなどが慣れていない業務についてはマニュアル検索してもらうことで、教育コスト削減につながります。
しかし、マニュアルについては用意していないクリニックが多く、マニュアルを作っていても効果的に運用されていないケースが散見されます。マニュアル作成の際に、参考にすべきお勧めのツールや書籍がありますので、こちらを参考に作成を進めてみてください(表4参照)。
表4:マニュアル作成支援ツールについて
ツール名 | ポイント |
■NotePM …NotePMは、誰でもかんたんに使えて、組織パフォーマンスを向上させる情報共有ツールです。 ■Notion …Notionは組織における情報共有のあるべき姿を新しい形に再現できる革新的なツールです。 | 社内Wikiとして有効 |
■Teachme Biz …Teachme Bizは、手順書の作成・共有・管理をカンタン&シンプルにし、企業の生産性向上を実現するサービスです。 | 業務手順マニュアルに有効 |
■Dojoナビ …Dojoナビは、ERP・WEBシステム導入・運用時のシステム教育・運用コスト削減を実現します。システム操作マニュアルをペーパーレスで作成するのでDX推進に貢献します。 | 操作手順マニュアル作成に有効 |
■tebiki …tebikiとは、スマホで撮影するだけでマニュアルを作成できる動画マニュアル作成ソフトです。伝わりにくい”カン・コツ”を可視化し、データ蓄積することでOJTの効率化や業務標準化、技術伝承を推進させます。 | 動画によるマニュアル作成に有効 |
■参考書籍:小さな会社の〈人と組織を育てる〉業務マニュアルのつくり方 -工藤 正彦 (著)
4.働きやすい環境整備 その3:福利厚生
福利厚生の充実という観点では、下記は有効なポイントとなります。
・社会保険が完備されている
・補助や手当が出る(家賃補助・通勤手当・研修補助 等)
・産休・育休制度がある
・有給消化率が高い
各種手当が充実していることや有給休暇が取りやすいなど、求職者から「このクリニックはスタッフのことを考えてくれている」と受け取られ、良いPRポイントになりえます。
5.働きやすい環境整備 その4:円滑な人間関係
人間関係は採用において、最も重要かもしれません。良い人間関係があれば連携がよく取れ、業務が効率的に行われますし、良い雰囲気であれば離職も減るでしょう。
また、求職者がクリニックに面接や見学に来た際に、医療事務スタッフの雰囲気が良くないと感じる医院や、スタッフ同士が言い合っている様子を見ると、入職したいとは思えないですよね。
良い組織のためには、ポジティブなコミュニケーションが重要です。院長自ら組織マネジメントについて学ぶことや、日頃からのスタッフさんへの明るい声かけや、労うような関わりを意識的に行いましょう。
6.まとめ
弊社は働きやすい環境づくりの一つとして自動精算機の導入と運用支援を行っております。
自動精算機の導入を検討されているクリニック様はぜひ、お気軽にご相談ください。
この記事の執筆者
株式会社APOSTRO 経営企画室
川越 雄太
大学卒業後、大手コンサルティング会社にて、医療機関のコンサルティングに従事。その後、医療介護人材紹介会社の経営企画部門を経て、当社へ入社。クリニックや薬局のコンサルティング、ITシステム導入支援のアドバイスを行なっている。