医療DXの制度変更が本格化!電子カルテ・電子処方箋・マイナ保険証の最新動向

医療DXの中でも重要な施策である電子カルテの標準化・共有化の推進、電子処方箋の普及強化、マイナ保険証の利用率要件の引き上げなど、医療機関の運用に関する取り組みが今後段階的に進む見込みです。
特に、標準型電子カルテの仕様策定や電子カルテ情報共有サービスの本格稼働、電子処方箋と電子カルテの一体整備など、医療情報システム全体に関わる施策が集中的に動き出します。
こうした変化に対応するためには、制度の方向性を把握しておくことが重要です。
本記事では、今後の医療DXの主要施策をわかりやすく解説していきます。
【医療DX】制度変更が集中的に進むタイミングに
医療DXとは、医療現場のアナログ業務をデジタル化し、医療の質向上・業務効率化・医療安全・地域連携の強化を一体的に実現する取り組みのことです。
政府は「医療DX令和ビジョン2030」を掲げ、全国の医療機関で情報が途切れなく連携できる医療体制を目指しています。
そのなかでも特に重要な施策が、電子カルテ情報の標準化・共有化の本格化、電子処方箋の導入促進、マイナ保険証の利用促進です。
電子カルテの標準化・普及
電子カルテは医療DXの中心となる基盤であり、政府は今後の医療提供体制に重要なインフラとして位置づけています。
ここでは、電子カルテの導入目標と今後の方針、すでに電子カルテを導入している医療機関の注意点と補助金について解説します。
電子カルテの導入目標
厚生労働省は「遅くとも2030年までに、概ねすべての医療機関で電子カルテを導入する」方針を示しています。また、政府与党・自民党の政策提言「医療DX令和ビジョン2030」では、電子カルテ普及率について2026年度までに80%、2030年度までに100%という明確な数値目標が掲げられています。
厚生労働省の公式目標ではありませんが、政策の方向性を示す一次資料として、医療界の専門媒体でも広く参照されている資料です。
参考:医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて‐厚生労働省
参考:「医療DX令和ビジョン2030」の提言‐自由民主党政務調査会
2025年度に標準型電子カルテ仕様が決定
電子カルテは現在、病院・診療所・ベンダーごとに仕様が異なり、共有・連携が難しいという課題があります。
課題を解消するため、政府は「標準型電子カルテ」の仕様を2025年度中に公表し、2026年度には全国普及計画を示す予定です。
これにより、電子カルテの仕様統一や医療機関間のデータ連携の円滑化、ベンダー間の互換性確保などが期待されています。
参考:電子処方箋・電子カルテの目標設定等について‐厚生労働省
すでに電子カルテを導入している医療機関の注意点
厚生労働省の方針では、電子カルテを導入している医療機関に対し、次回のシステム更改に合わせて、共有サービスや電子処方箋管理サービスに対応できるよう改修を進めることが促されています。
特に、地域医療支援病院や特定機能病院などは、医療法改正案で努力義務が示されていることから、率先した対応が期待されています。
そのため、電子カルテの更新時期、利用中ベンダーの対応状況、共有サービスへの接続可否を、事前に確認しておくことが重要です。
また、電子カルテ情報共有サービスは、医療法にて正式に位置づける必要がありますが、現時点では法律が審議中で成立には至っていません。
そのため、電子カルテ情報共有サービスを加算の必須要件とする時期は先送りされ、医療DX推進体制整備加算については令和8年5月31日まで経過措置が延長されています。
参考:電子処方箋・電子カルテの目標設定等について‐厚生労働省
参考:医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)‐厚生労働省
電子カルテ情報共有サービスは補助金が活用できる
電子カルテ情報共有サービスの導入には、国の補助金を活用できる制度が用意されています。
ただし補助金の対象となるためには、オンライン資格確認等システムと電子処方箋管理サービスを導入したうえで、電子カルテ情報共有サービスを利用できる環境が整っていることが前提です。
補助金の申請期間は、令和13年(2031年)3月31日までに電子カルテ情報共有サービスの導入を完了、同年9月30日までに申請を行うことで、補助金交付の対象となります。
補助金制度の詳細は、医療機関等向け総合ポータルサイト「電子カルテ情報共有サービスとは」をご確認ください。
電子処方箋
電子処方箋は、薬剤情報の一元管理や重複投薬防止、医療安全の強化を目的に、国が医療DXの中心施策として進めている仕組みです。ここでは、電子処方箋の導入率と今後の方針、補助金、そして導入により得られるメリットも解説します。
電子処方箋の導入率と今後の方針
デジタル庁が公表している最新データ(11月14日更新)によると、電子処方箋の導入率は病院が17.3%、医科診療所は23.3%、薬局は86.5%でした。
当初は「2025年3月までに概ね全国普及」としていたものの、実態として医療機関での電子処方箋普及は遅れが大きく、国は普及策の見直しを進めています。
また、厚生労働省からは、電子処方箋に関して以下の方針が示されています。
- すでに電子カルテを導入している医療機関は、次回システム更改時に電子処方箋への対応が促される
- 未導入機関は、標準型電子カルテ導入とセットで電子処方箋を利用できるようにする
電子カルテと電子処方箋がセットで整備される前提となるため、どちらも並行して導入する必要があります。
参考:電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード‐デジタル庁
参考:電子処方箋・電子カルテの目標設定等について‐厚生労働省
電子処方箋管理サービス導入は補助金が活用できる
電子処方箋管理サービスの導入には、国の補助金を活用できる制度が用意されています。
令和7年10月1日以降に導入した医療機関も補助対象となり、期限は令和8年9月まで延長されました。
また、従来の補助対象は院外処方箋のみでしたが、新たに院内処方で電子処方箋管理サービスに登録する機能も補助対象に追加されています。
なお、補助金申請フォーム等は改修中のため、現時点では申請できません。改修完了後に申請開始日が通知される予定のため、最新情報の確認が必要です。
参考:令和7年10月1日以降に電子処方箋管理サービスを導入した医療機関等における電子処方箋補助金について‐医療機関等向け総合ポータルサイト
電子処方箋を導入するメリット
電子処方箋の導入は、医療安全と業務効率化の両面で大きなメリットがあります。
- 重複投薬・禁忌薬チェックが容易になり医療安全が向上する
- 処方内容の自動入力により、事務作業の効率化が進む
- 薬局からの問い合わせが減少し、現場の負担が軽減される
- 患者情報の一元管理で説明負担が減少する
- 在宅医療や他院連携がスムーズになる
人材不足が続く医療現場において、電子処方箋は負担軽減の手段としても重要性が高まっています。
マイナ保険証(オンライン資格確認)
オンライン資格確認はすでに全医療機関で導入が原則となっており、今後はマイナ保険証の利用促進が求められています。
マイナ保険証の利用率は診療報酬における施設基準要件として明確に位置づけられており、実際に患者さんに使ってもらう運用体制が必要となります。
ここでは、2026年度以降のマイナ保険証の利用率実績と、利用率向上によるメリットについて解説します。
2026年度からの利用率実績
マイナ保険証の利用率実績は、新たに令和7年10月以降、2つの期間に分けて設定されました。
| R7.4.1~9.30 | R7.10.1~R8.2.28 | R8.3.1~5.31 | |
| 医療DX推進体制整備加算1・4 | 45% | 60% | 70% |
| 医療DX推進体制整備加算2・5 | 30% | 40% | 50% |
| 医療DX推進体制整備加算4・6 | 15% | 25% | 30% |
オンライン資格確認を設置しているだけでは加算は算定できず、患者さんに実際にマイナ保険証を使ってもらう運用体制が必須です。
そのため、受付での声かけや、高齢者の操作支援などの運用改善が必要となってきます。
参考:医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)‐厚生労働省
マイナ保険証の利用率を上げるメリット
マイナ保険証の普及は、事務作業と医療安全の両面でメリットがあります。
- 過去の薬剤情報が参照でき、重複投薬・禁忌薬チェックが容易になる
- 保険資格の誤登録が減り、受付業務がスムーズに
- 限度額認定証など医療証の確認が自動化される
- 患者説明に必要な情報が一元管理されるため負担が減る
- 受付の効率化によって待ち時間短縮にもなる
医療現場の質向上にもつながることから、マイナ保険証の普及は今後さらに重要性が高まると考えられます。
今後も医療DXの動向に注目
今後、電子カルテ情報共有サービスの本格稼働や、電子処方箋・電子カルテの一体整備、利用率要件の引き上げなどが進むことで、医療DXはさらに加速していく見込みです。
制度は適宜見直しが入っており、要件や仕組みが更新され続けています。
そのため、最新の制度動向を継続的に把握することが、現場にとって重要なポイントとなります。 国の動きを踏まえつつ、自院に必要な取り組みを進めていく姿勢が、これからの医療機関に求められています。