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【2025年度補正予算】1床19.5万円の支援内容と実務対応のポイントを解説

病院経営

病院経営の厳しさが増す中、政府は2025年度補正予算において、医療分野の賃上げ・物価上昇に対応するための緊急支援策を盛り込みました。
病院にとっては資金面での支援が期待される一方で、「どのような制度なのか」「自院は対象になるのか」「実務上、何を準備すべきか」といった疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

本記事では、2025年度補正予算の病院向け緊急補助について、制度の背景や概要、国会審議での論点、そして病院が実務として検討すべきポイントを解説します。

病院向けに緊急補助が必要な背景

病院経営は、医業利益ベースで約7割もの病院が赤字という結果が出ています。
赤字の背景には、医療従事者の人件費上昇と、医療材料費・光熱費などを中心とした物価高騰があります。コスト増は現行の診療報酬だけでは十分に対応できず、多くの病院経営を圧迫しており、地域医療の崩壊につながりかねません。こうした状況を受けて、2025年度補正予算では、診療報酬改定を待たずに当面の資金を投入する緊急対応策として、病院向けの補助制度が位置づけられました。
経営悪化のスピードを一時的に緩和し、地域医療の提供体制を維持することが狙いとされています。

参考:2025年度病院経営定期調査 中間報告(集計結果)‐日本病院会・日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会

補助の概要

2025年度補正予算案では、「医療・介護等支援パッケージ」の一環として、病院の経営危機に対応するための緊急補助が盛り込まれました。本補助は診療報酬ではなく、補助金(交付金)として支給され、許可病床数を基準に定額で算定されます。政府は本補助について、医療従事者の賃上げ(プラス3%・半年分)を念頭に置いた措置であることを説明しており、方向性を示すひとつの指標になっています。
対象となる医療機関と施設、交付要件、支給額の内訳、病床別の支給額の目安は以下のとおりです。

対象となる医療機関と施設

本補助の主な対象は、一般病床・療養病床・精神病床です。
有床診療所についても支援対象となりますが、病院よりもやや低い単価が設定されています。
無床診療所・訪問看護ステーション・薬局には、別枠の1施設あたり定額の支援が用意されています。

交付要件

12月23日時点では、厚生労働省から当該補助金の交付要件を明記した正式な案内(通知・要綱等)は発表されていません。今後、補助金の具体的な交付要件や申請方法については、正式な通知により示される見込みです。

支給額の内訳

支給額は、以下の2つに区分されています。

  • 賃金分:1床あたり8万4,000円
  • 物価高騰分:1床あたり11万1,000円

合計で、1床あたり約19万5,000円となります。

病床数別の支給額目安

病床数に応じた支給額の目安は次のとおりです。

  • 100床病院:約1,950万円
  • 200床病院:約3,900万円
  • 300床病院:約5,850万円

病床数が多いほど、支給額も大きくなる仕組みです。

救急・周産期などへの上乗せ支援

救急医療や周産期医療など、地域医療の中核を担う病院については、1床あたりの補助に加えて、1施設あたり数千万円規模の上乗せ支援が用意されています。
全身麻酔手術件数や分娩件数などの実績に応じて、数千万円規模の加算が想定されており、重症患者や救急搬送を多く受け入れている基幹病院の経営を下支えする狙いがあります。

病院が実務として検討すべきポイント

今回の補助金を受け取るにあたって、一定の体制整備や事務対応が前提となります。
具体的な検討すべきポイントを解説してきます。

1.賃上げ計画と補助金の位置づけを明確化

政府は「医療従事者の賃上げ3%・半年分」を一つの目安として示しています。
そのため、対象職種・賃上げ(率・金額)・実施開始日といった具体的な計画を作成し、経営会議での決定事項として整理しておくことが望ましいです。今回の補助金を「賃上げ原資の一部に充てる」という位置づけを明確にしておくことで、後の確認にも対応しやすくなります。

2.病床・施設情報の確認と申請事務の準備

支給額は「許可病床数×定額」で算定されるため、最新の許可病床数や病床機能区分、各種届出状況を正確に把握しておきましょう。また、有床診療所や併設の訪問看護ステーション、薬局など、グループ内に複数の施設がある場合には、それぞれがどの支援対象になるのかを整理しておくことで、申請・管理の実務負担を軽減できます。

3.職員への説明

職員向けには、「今回の補助でどこまで賃上げできるのか」「診療報酬改定や今後の経営見通しと合わせてどう考えているのか」を丁寧に説明することが重要です。説明が不足すると「一時的な補助で終わるのではないか」という不信感を招く可能性があります。さらに、地域住民や自治体に対しても、補助金を活用して医師・看護師確保や救急体制維持にどうつなげていくのかを発信しておくことで、今後の運営においてプラスに働くことが期待されます。

補正予算の成立スケジュール(2025年度)

2025年度補正予算案は、11月28日に閣議決定されました。

  • 12月8日:国会提出
  • 12月11日:衆院本会議で可決
  • 参院審議を経て、12月16日頃の成立が見込まれる

会期末は12月17日であり、今国会での成立はほぼ確実と報じられています。

国会審議での主な論点

2025年度補正予算案は、総額18.3兆円と過去最大級の規模となったことから、国会審議ではその妥当性をめぐってさまざまな論点が示されました。

1.補正規模と「一時的支援」に対する懸念

補正予算の規模が大きいことについて、野党からは「本来は当初予算で対応すべき恒常的経費まで補正に含めているのではないか」「選挙対策的なバラマキではないか」といった指摘が出ています。
物価高対策や成長投資など幅広い名目が並ぶ中で、事業ごとの必要性や優先順位、効果の検証が十分かどうかも審議の焦点となりました。

2.医療・介護分野における補助の実効性

医療・介護分野の賃上げ・物価上昇支援については、「補助金が本当に現場の賃上げに結びつくのか」「一時的な資金投入にとどまり、恒常的な賃金改善にはならないのではないか」といった点が論点とされています。
また、病院1床あたり約19.5万円という支援額についても、「地域医療崩壊を防ぐために十分な規模なのか」「診療報酬本体の引き上げと比べて、どこまで効果があるのか」といった質疑が繰り返されています。

3.財政規律と将来世代への影響

財源の多くを国債発行に頼る点については、「金利上昇局面で国債残高をさらに積み増すことへの懸念」「将来世代への負担増につながるのではないか」という指摘も出ています。
一方、政府・与党側は「物価高と賃上げを同時に進めるためには今回の規模が必要」「デフレ脱却に向けた重要な経済対策である」と説明しており、必要な対策か、行き過ぎた歳出膨張かが大きな対立軸となっています。

本補助をふまえた病院の対応が重要

今回の病院向け緊急補助は、急激な人件費・物価上昇によって経営が圧迫される中、診療報酬改定を待たずに当面の負担を緩和するための措置です。
支給額は許可病床数に応じた定額補助であり、赤字・黒字ではなく、賃上げに取り組む体制があるかどうかが重要なポイントとなります。
一方で、本補助は補正予算による一時的な支援であり、恒久的な財源対策ではない点には注意が必要です。そのため、病院としては補助金を前提とした経営ではなく、中長期的な人材確保や経営改善とあわせて活用する視点が求められます。
今回の制度をきっかけに、自院の賃上げ方針や体制を改めて整理することが、今後の病院経営において重要になるでしょう。

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